海外サッカー:記事にはならないこぼれ話【アーセナル、プレミアリーグ等】

某世界的メディア編集部勤務の河又シュートが、記事にはできない妄想コラムやこぼれ話を紹介します。移動時間やお暇つぶしに是非…。

本日の記事にできない海外サッカーゴシップニュースまとめ【12/14】

本日イギリス各紙で報じられたゴシップニュースの中から、気になるものをまとめます。信じるかどうかはアナタ次第…。

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『デイリー・ミラー』

マンチェスター・C、レスターのイングランド代表DFベン・チルウェル獲得に5000万ポンド(約71億円)準備か

●素行不良が何度も伝えられるバルセロナFWウスマン・デンベレチャンピオンズリーグトッテナム戦前に遅刻を謝罪

ザ・サン

ダビド・デ・ヘアマンチェスター・Uと長期契約へ

レアル・マドリーMFイスコ、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでブーイングを浴び、退団を決意か。アーセナルチェルシーがねらっているとの噂

『デイリー・エクスプレス』

ニューカッスルのオーナーであるマイク・アシュリー、来年に3億ポンド(約428億円)でクラブを売却することに自信があるとかないとか

『デイリー・スター』

チェルシー指揮官マウリツィオ・サッリ、主将ギャリー・ケイヒルに1月の移籍を許可したとか。候補地はアーセナル

アキレス腱断裂の悪夢を乗り越え…“静かな闘将”コシールニーの復帰というアーセナル「最大の補強」

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一瞬、時が止まったようだった。

2018年5月3日、ヨーロッパリーグ(EL)準決勝セカンドレグ。アトレティコ・マドリーアーセナル。ワンダ・メトロポリターノで行われた一戦。前半10分になろうかというところだった。アーセナルが相手陣内でボールを奪われた時、アーセナルDFローラン・コシールニーはマークしていたジエゴ・コスタの前に出てインターセプトを試みた。

しかし、悲劇が訪れる。

右足を踏み込んだ瞬間、フランス代表DFは崩れ落ちた。痛みに悶え苦しみ、様子に気づいたD・コスタはすぐに試合を止めるように要求。医療スタッフがすぐに駆けつけたがプレー続行は不可能で、自力で立つこともできない。同胞のアントワーヌ・グリーズマンは呆然とし、ピッチ上にいた全選手、両チーム指揮官、会場に詰めかけたサポーターが心配そうに見守る中、担架でピッチを後にした。診断結果は「右足アキレス腱断裂」。7カ月以上の戦線離脱が見込まれた――。

そんな悪夢から約200日。コシールニーはついにピッチへと戻ってきた。

■計り知れないダメージを与えた大ケガ

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もともと5月に断裂する前からコシールニーのアキレス腱はボロボロだった。この大ケガの約1年前には、イギリス『スカイスポーツ』のインタビューでこう語っている。

「毎朝ケアが欠かせないんだ。アキレス腱の治療を受けていて、これは引退するまで続けなければならない。今は良い状態だけど、1週間に3試合続くとつらいんだ。回復するまで休む時間が必要だからね。回復プログラムを1~2週間やめてしまうと、また問題が起きる。チームのために毎日ケアが必要だ」

2010年にロリアンからおよそ1250万ユーロで加入して以来、コシールニーは出ずっぱりだった。大ケガ前までの8シーズンで、公式戦324試合に出場。2010年以降、チームで最も出場している選手の1人だ。センターバックをなかなか補強しないクラブの方針やケガ人の多いチーム事情、またピッチ広域をカバーするプレースタイルなどもあって、体への負担は大きすぎたのだろう。難しい状態ながらもケアを欠かさず行い、真摯にケガと向き合ってきた中での悲劇だった。

アトレティコ戦前には、自身が「忠誠を誓う」と敬服する恩師アーセン・ヴェンゲルが退任を発表。ゲームキャプテンとして、彼に最後のタイトルを手渡すために燃えていたはずだ。さらにシーズン終了後にはロシア・ワールドカップも控えており、いつにもまして入念にケアをしていただろう。そんな中で起きたアキレス腱断裂が、コシールニーに与えたダメージは計り知れない。負傷の瞬間に地面を叩いて涙を流していたのは、ただ痛みによるものではないはずだ。悔しさや無念さ、恩師への思いなど様々な感情から溢れてしまったのだろう。

それでも大ケガから数日後、自身のSNSに「自分のためだけではなく、家族や友達、そしてサポートをしてくれるすべての人のために戦う決心をした。またすぐ会おう」と投稿し、苦しいリハビリに耐え抜いた。そして負傷から約8カ月、13日に行われたEL最終節のカラバフ戦で、ついにピッチへと戻ってきたのだ。

エミレーツ・スタジアムで行われた一戦で久々に先発出場を果たしたコシールニーは、サポーターの大歓声を受けながら72分までプレー。丁寧なビルドアップや的確なカバーリングは健在で、62本のパスはすべて成功。以前ほどのスピードはなかったかもしれないが、大きな負傷の後だ。ベストフォームを取り戻すには相当な時間が必要だろう。それでも、主将としてチームメイトに指示を出しながらチームを支える姿はとても印象的だった。

■不可欠である“静かな闘将”

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コシールニーはなかなかその感情を表に出すことは少なく、どちらかと言えば寡黙なイメージが強い。しかし、内には熱い思いを秘めた選手である。自身の出場が叶わなかったロシアW杯前にはフランス代表選手1人ひとりに手紙を送るなど、ともにプレーした仲間への思いは強い。また昨年には、トレーニング中にクラブでモチベーションを欠いていたアレクシス・サンチェス(現マンチェスター・ユナイテッド)を叱咤するなど、チームの一体感を最優先に考える選手でもある。

そして何より、アーセナルというクラブを最も理解している選手だ。

今夏加入したGKベルント・レノは「いつも若い選手たちに声をかけてくれるんだ。ドレッシングルームでも偉大だよ」と話しつつ、プレミアリーグ第14節のトッテナムとの“ノースロンドン・ダービー”直前の出来事について明かしている。

「メンバー外だったけど、5分前にこの試合について本当に、本当に多くの良い歴史を教えてくれたんだ。そしてこの一戦がいかにファン、選手、クラブにとって重要なものかを語ってくれた。完璧なキャプテンだよ」

本拠地エミレーツ・スタジアムでの4-2の逆転勝利の裏には、主将の熱い言葉があったのだという。ライバルとのダービーマッチに出場できないことは、誰よりも悔しかったに違いない。それでも、主将としての役割を全うした。コシールニーの激励は、今回の逆転勝利に少なからず影響したはずだ。

2020年まで契約を残すコシールニーだが、現地メディアの報道では今季限りでの退団もささやかれている。ウナイ・エメリ監督も先日冬のマーケットでセンターバックの補強を示唆しており、来夏クラブを離れる可能性もある。

しかし、22年ぶりに新体制を迎えたアーセナルにおいては絶対に欠かせぬ存在だ。

数少ないセンターバックというだけではない。最古参の1人であり、不遇の時代もタイトル獲得の歓喜も知っている数少ない選手である。確かに2003-04シーズンの無敗優勝を支えた主将パトリック・ヴィエラほど全面に闘志を押し出す選手ではないが、ピッチ内では黙々と最後方からチームを助け、ロッカールームでは勝利のために自ら先頭に立つリーダーである。

2005年のヴィエラ退団以降、長らくキャプテンシーの欠如を批判されたアーセナルにおいて久しぶりに現れた“主将”だ。現メンバーでコシールニーほどキャプテンマークを巻くにふさわしい人間はいないだろう。ましてや10年間在籍するアーロン・ラムジーの退団が決定的となった今、コシールニーまで失うことは大きすぎるダメージだ。クラブをよく知る人間を一気に切ればどうなるかは、過去の様々なクラブが示している。

前任者ヴェンゲルは負傷者の復帰を度々「補強」と表現していたが、主将の復帰こそ真の「補強」といえる。33歳となり現役引退の足音も近づく中でも、クラブ内の役割は大きい。ムッシュ(ヴェンゲル氏の愛称)の去った今、ガナーズアーセナルの愛称)の歴史や伝統を新加入や若手選手に伝えられる貴重な存在なのだ。

カラバフ戦の交代時、同胞マッテオ・グエンドウジにコートを掛けてもらい、アレクサンダル・ラカゼットにもみくちゃにされながら笑顔を見せたコシールニー。試合後には、復帰の喜びを噛み締めた。

「今日は大切な日だよ。やっとリハビリが終わったんだ。このチーム、クラブのためにプレーできて幸せだし、本当に楽しかった。感情的になり、リハビリ中の色々な思いが頭をよぎったよ。自分が誇らしい。多くの人が助けてくれて、自分のすべてを捧げてきた。戻ってきた今、みんなは懸命に働くようプッシュしてくる。でも、OKだよ。仕事が大好きだからね!」

「僕は笑顔を取り戻した。このクラブで楽しみたい。たった今、僕のシーズンがスタートしたんだ」

悪夢を乗り越え8カ月ぶりにピッチへと戻ってきた“静かな闘将”が、新生アーセナルを力強くけん引してくれることは間違いない。